朝、友人がタンブン(お布施)に行くというので付き合います。友人は、5年以上ずっと寝たきりだったお母様を最近亡くされ、今は喪に服す期間なので毎日のお布施と仏壇前での読経を欠かしません。少し歩いて小道を入ったところで待っていると、お坊さんがやってきます。お供え物を鉢に入れ手を合わせると、自分だけのためにお経を読んでくれます。その行為にどんな意味があるのかではなく、その意味は自分自身が感じとるのです。お昼前に今度は自宅の仏壇?の前で友人が一人でお経を読んでいました。そっと後ろに座って聞いていると、とても心地の良い気分になりました。お経に限らず宗教的な音楽のリズムには少なからず癒し効果があるのでしょう。
夕方5時、フォアランポーン中央駅まで、友人が送ってくれる予定でしたが、なんだかバタバタと忙しそうだったので、自力で行くことにしました。家の前でタクシーを待っているとトゥクトゥクが停まったので、値段交渉をして乗り込みます。この金曜の夕方に街の中心部まで70バーツで行ってくれるそうです。タクシーはエアコンの涼しさがありますが、トゥクトゥクには自然の風の涼しさがあります。排気ガスが臭いですが、これがバンコクです。夕方6時少し前にバンコク中央駅に到着しました。改札を抜けホームを歩いていると、目の前に見慣れた二人組が歩いていました。そっと後ろに付いてもしばらく気づかずそのまま歩き続けていました。「食堂車はないんだって。」と後ろから自然に会話に入っていくと、特に驚きもしませんでした。本来ならIさんはムさんの家の近くの駅から同じ列車に途中乗車する予定でしたが、心配だったのでムさんがここまでタクシーで連れてきたようです。ここからはIさんと僕の二人旅が始まります。ムさんは、この後7月4日から9日まで日本で通訳の仕事があるそうです。Iさんの早口はムさんにとって2年間使う事の少なかった日本語のかなりのリハビリになった事でしょう。4号車はかなり前方なのでホームを相当な距離を歩かされました。ですが、チェンマイ駅は終着駅なので、ここで歩いておけば、チェンマイ駅で歩く距離が少なくなるという事です。とりあえず荷物を座席に置き、夕食について考えます。食堂車がないことが予定外でしたので、ムさんとIさんはもう一度食料をゲットするために来た道を戻るそうです。荷物を見ておく人が必要だからと、僕は列車内に残りました。もう往復で300mも歩きたくありません。Iさんに「気の利いたものを買ってきて。」とお願いしておきました。しばらくすると、ムさんとIさんが戻ってきました。気の利いたものはサンドウィッチでした。3等車が連結されていればムさんは途中まで一緒に行けたのですが、あいにく1等車と2等車のみの列車だったのでここでお別れです。Iさんがお世話になりました。
列車は18:10の定刻通り発車しました。車内は西洋人と台湾人と飛行機嫌いのタイ人と日本人でほぼ満席でした。特にどこか北欧の国の数組の家族連れが8名で乗り込んでいました。グループなのに席がバラバラの様だったので、いろいろな乗客に席の交換の交渉をしていました。もちろん僕もその対象となりました。2段ベッドの上と下では料金が異なるのですが、僕は安い方の上側だったので、気楽に交渉できたのでしょう。これで検札が来るまで落ち着いてゆっくりしていられなくなってしまいました。まだ、寝台の状態にはなっておらず、椅子が上と下の人で向かい合っているのですが、安い方(上)の人は進行方向とは逆を向いて座り、高い方(下)の人は進行方向を向いて座る事になっています。僕が移動してきた番号の高い方(下)の席の人は、タイ人の青年で大きなリュックにいろいろ詰め込んで「今からトレッキングに行きます。」といういで立ちでした。これからチェンマイの彼女に会いに行くというストーリーは想像もできません。話しかけてみると、「これからランプーンとランパーンのちょうど中間にあるドーイクンターン国立公園へトレッキングに行く。」という事でした。ちょうどその国立公園へ行く人のための駅があるので、そこで明日の早朝に下車するそうです。今日は金曜日なので、仕事帰りに寝台列車に乗り、土曜日の早朝に駅に着いたらそこからのんびり国立公園を散策しながら景色の良い頂上まで行き、そこで1泊したのち、日曜の夕方までに下山してまた国立公園駅から寝台利用で月曜の早朝にバンコクに戻るというコースだと思われます。テントや寝袋を入れると、1泊でも5泊でも荷物の量はそう変わらないので、どのみち大荷物になってしまうようです。タイ・カンボジア2週間の僕の荷物よりかなり大きめのリュックでした。そうこうしているうちに検札が来て、場所が違うことを指摘されましたが、「あそこの外国人と席を代わった。」と伝え事なきを得ました。これも旅の醍醐味です。ベッドメイク係の人に座席をベッドに変化させてもらい、2段ベッドの上段へ潜り込むと夜9時頃には寝てしまいました。トイレに起きたのは夜中の1度だけですが、その時は長時間停車していたので、たぶん時間調整のためでしょう。
つづく
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